2011年3月30日21時50分
4月1日に告示される統一地方選の道府県議選は、被害が少なくない地域の一部でも行われる。青森県議選の八戸市選挙区は定数8に11人が立候補を予定する激戦だが、うち9人は選挙カーを使用しないよう申し合わせた。
「ハマを回っても、選挙の話なんてできない」
地元漁協幹部でもある自民の現職は嘆く。全国3位の水揚げ量を誇る水産業は壊滅的な打撃を受けた。後援会長と選挙対策本部長の水産会社も水浸しになった。機械がすべて動かなくなったことに呆然(ぼうぜん)とする水産工場の幹部、後片付けに追われる従業員……。いつもはフル回転で応援してくれる人が、今回は投票所に足を運んでくれるかどうかさえ判然としない。
ある民主の現職は21日、スタッフ13人と民家の泥さらいを7時間続けた。ガソリン不足で移動もままならず、街頭演説を自粛。することがなくなっていたところ、スタッフから「それならボランティアを」と提案された。ただ、被災者に選挙の話は一切しなかった。「選挙をよろしくなんて言ったら、逆に票を失う」
そんな中、自民現職の一人は震災復興に力点を置いた活動をしている。震災前に地域経済の再生などを掲げたパンフレットを作っていたが、震災後にすべて破棄。「がんばろう八戸!」と震災復興への決意を見出しにし、「今こそ力を結集し、元気な八戸を再生しましょう」と記した。
29日には約50人を集めたミニ集会を開き、「東日本の復興には20兆円、30兆円かかる。八戸港に集中投資し、岩手、宮城の救援都市にする」と青写真を示した。この現職は地元選出の大島理森副総裁に近く、「自民だ民主だと言っている場合じゃない。大島さんには復興大臣になってもらいたい」と訴えた。(別宮潤一、熊田志保、藤原慎一)