2011年3月30日19時55分
岩手県宮古市では、津波で打ち上げられた漁船が市の中心部に多数残っている=25日、相場郁朗撮影
集落の奥から海の方を望む。防潮堤(奥)を越えてきた津波で建物はみな破壊され、ひっくり返った船が、がれきに埋もれていた=27日午後、岩手県宮古市の音部里集落、井上写す
岩手県内の24漁協に昨年末時点であった約1万4200隻の漁船のうち、東日本大震災後に、被害を受けずに漁港に残っているのが確認できているのは、現時点で4%に満たない500隻程度であることが、朝日新聞のまとめでわかった。大半が津波で流されたり壊されたりしたとみられる。
県などによると、もともとあった漁船の多くは、アワビやウニ漁、ワカメの養殖などに使う小型のもの。無事だったのは、沖に避難した大型船などごく一部とみられる。
特に津波被害が大きかった南部の沿岸では、大船渡市内の4漁協で3千隻弱あった漁船が30〜40隻程度しか残っていないほか、陸前高田市でも、広田湾漁協の約1400隻のうち、あるのが確かめられたのは約40隻という。
県中部の沿岸の宮古市など4市町村の7漁協でも、約5700隻のうち、残っているのは100隻程度。久慈市など沿岸北部4市町村の8漁協も1820隻のうち、約180隻しか確認できていない。
水産庁の29日夕時点のまとめでは漁港の被害も大きく、岩手県で111、宮城県で142ある漁港のほぼすべてが「壊滅的な被害」という。
岩手県はアワビやウニなどの養殖や定置網漁が盛ん。サケ・マス類やサンマ、イカの漁獲量も多い。県内の漁業生産額は約453億円(2008年)で、加工品生産額と合わせ、水産業は総額約1243億円の基幹産業。県水産振興課は、この震災での県内の漁業被害額は少なくとも900億円にのぼると見ている。
県漁業協同組合連合会の大井誠治会長は「県内の水産機能は完全にやられ、自助努力だけでは復旧できない。漁業をやめる人も出るだろう」と話している。(赤井陽介、宮崎園子)