2011年3月29日7時20分
一面のがれきと化した街に、真新しい電柱が連なる――。津波で家屋の8割が流された宮城県南三陸町志津川で、東北電力(本店・仙台市)が復旧作業に着手し、27日、主要道路に沿って電柱を立てる工事が本格化した。変わり始めた風景は被災者に小さな希望を与えている。
「ライフラインが回復しなければ、前に進めない」と同町が東北電力に早期復旧を要請していた。電柱の高さは被災前と同じ約16メートル。他県の支店の応援も得て急ピッチで作業を進めている。押し流された変電所の復旧も同時に進めなければならず、通電は4月末ごろになりそうだという。
水をかぶった土は、穴を掘ると水がしみ出すため、慎重に進めている。吹雪の中、作業を指揮していた協力会社の統括責任者、徳永昌利さん(41)は「被災者のために一日でも早く電気を送りたい」。近くでがれきを撤去していた漁網販売会社の今野益二郎さん(60)は「津波で自宅も会社も流されたが、復興の光がほのかに見えた気がしました」と話していた。(武田肇)