2011年3月24日23時30分
東日本大震災の被災地に向けた企業の支援が本格化してきた。定番の食料品や日用品だけでなく、避難生活に役立つ製品を送ろうと各社は知恵を絞る。
24日、「熱々のカップ麺」を携えて被災地に乗り込んだのは大手食品メーカーの日清食品。給湯機能付きのキッチンカー「チキンラーメン号」を走らせ、仙台市の3カ所で主力商品を無料配布した。ガソリン不足に苦しみながら15日から断続的に続けている。
「東京靴流通センター」などを展開する靴専門店チェーン、チヨダは、スニーカー2万3千足と子ども用靴下2780足を仙台市に送る。靴を履かずに逃げまどう被災者をテレビで見た社員たちから、「できることをやろう」と声が上がった。
警備大手セコムはダチョウの抗体を使った医療用マスクと消毒剤、10億円相当分を被災地に送っている。新型インフルエンザの発生時に自社で備えていたものを提供する。
自社製品を役立ててもらおうという企業も多い。
携帯電話がつながりにくい被災地の事情を踏まえて、JVC・ケンウッドは携帯電話の通信網に頼らず、交信が可能な簡易無線200台を送る。損壊した建物の調査に貢献しそうなのが、オリンパスグループが送る工業用内視鏡と非破壊検査装置。内視鏡はわずかな隙間から入れて建物の内部の様子を観察できるほか、検査装置も超音波で建物の内部の傷を調べられる。
入浴もままならない被災者のため、資生堂は水が要らないシャンプー1万個や手指消毒剤2万個を送る。旭化成が「サランラップ」50万本を寄付するのは、阪神大震災の避難生活で、食事の時に皿の上に敷いて使って重宝した、との経験談からだ。
2004年の新潟県中越地震で配布した際に被災者に好評だったのが、ユニ・チャームの犬猫用ペットフード。今回も「現地から要望があれば応えたい」という。
支援企業の国籍は幅広い。韓国のサムスングループは携帯電話や衣類など計6億2千万円相当の支援を決定。人命救助グループ10人、医師と看護師11人の派遣も準備中だ。家電量販店ラオックスの筆頭株主、中国の蘇寧電器は義援金5千万円を送る。08年の中国・四川大地震で、日本の企業から支援されたことへの感謝の意も込める。
大手スーパー「西友」を傘下に持つ米ウォルマートは4億円相当の現金や物資を送る。スウェーデンの家具大手イケアグループは、17日から関西の2店舗で、顧客が通常の半額で布団などの物資を購入し、被災地に送ることができる支援策を始めた。
企業が被災地向けに表明した義援金や物資などの支援は日本経団連の24日までの集計で650社、530億円。募金や寄付はネット上で利用者がクリックすれば、クレジットカードなどから引き落としで払える「ワンクリック寄付」が主流だ。ヤフージャパンが11日の発生直後から始めた「ヤフー基金」は23日までの募金額が13億円を突破。楽天やニフティも自社サイトなどで寄付を募る。通信業界では、NTTドコモが携帯電話の送金機能で義援金を送れるようにしている。
IT活用にたけている米企業の活動も盛んだ。米アップルは音楽や動画を配信する「アイチューンズストア」に寄付金を受け付けるリンクをつくった。5〜200ドルの6段階の寄付ができる。検索エンジンの米グーグルが震災ページに寄付コーナーを設けたほか、オンライン書店米アマゾンも自社サイトで寄付を呼びかけている。(大嶋辰男、丹治吉順、原島由美子)