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不安解消へ「汚染地図」を 福島第一原発事故

2011年3月24日

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 原子炉が小康状態を続ける一方で、汚染の値が深刻度を増している。政府が「ただちに健康影響がでるわけではない」と繰り返すだけでは住民の不信や不安を消すことはできない状況になりつつある。

 原発から30キロ離れた福島県浪江町の大気の汚染は、平常時の自然放射線の1500倍ほどの値だ。65キロ離れた福島市でも100倍ほど。同程度の場所は多い。「胃のエックス線の何分の1」のたとえでは、もはや安心できない。計算上は福島市でも屋外で数日間過ごせば、1枚撮る量になる。

 原発から放射性物質の放出が続いていること、風に乗って流れていることを示している。汚染地では、空中や地表にある放射性物質からの被曝(ひばく)が蓄積されていく。

 身体への被曝、野菜や水道水の汚染。ふるさとに、このまま住み続けることができるのか、住民たちは毎日、悩み、苦しんでいる。

 次の対策を考えるときがきている。地震発生の翌日に政府は「20キロ圏内からの避難」を指示した。驚くような素早い対応で、初期対応としては有効だった。

 今は同心円状の画一的な対策だが、今後は「きめ細かい対策」が必要になる。各地の汚染は風の方向や地形、雨に左右されて大きくばらつき、まだら状になっていることがわかってきた。そのことも考慮し、住民の被曝を最小に抑えなければいけない。

 新たな対策には、地域ごとの詳細な情報が欠かせない。どの地域が、あと何日で、あと何カ月で「避難を考えるレベル」の50ミリシーベルトに達してしまうのか。土壌や野菜、水の汚染データもさらに集め、素早く公表する。驚く数字がでれば、動揺も広がりかねないが、合理的で有効な対策をとるには、厳しい現実と向き合うことも必要だろう。

 国は23日になってようやく、緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)を使った汚染地図の推測結果を公表した。原発から北西、南の方向に汚染が広がっていた。

 避難地域は拡大すればいいものではない。広い地域で人の営みを消してしまうマイナスははかり知れない。自宅を離れ、慣れない生活環境下で暮らすストレスは大きい。避難先で何人も死亡している。

 一方で、妊婦や甲状腺がんを発症しやすい子どもは、優先的に守らなければならない。

 さらに広い範囲で測定点を増やし、「汚染地図」を作る。それを開示しながら新たな対策を考えるときだ。(編集委員・竹内敬二)

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