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海から2キロの田んぼにイルカ 市民・ボランティア救助

2011年3月23日8時40分

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写真:スナメリを救出する平了さん=22日午後1時38分、仙台市宮城野区、金川雄策撮影拡大スナメリを救出する平了さん=22日午後1時38分、仙台市宮城野区、金川雄策撮影

 「田んぼにイルカがいる」。被災地でペットを保護しているボランティアに22日午前、耳を疑う電話が入った。場所は仙台市、海岸から2キロほど陸側に入った田園地帯。かすかな命を助けようと救出作業が始まった。

 ペット関連会社「ドックウッド」(仙台市)を経営する平了(りょう)さん(32)はこの日、宮城県石巻市で被災集落を訪ねる予定だった。震災後、仲間たち約30人で、飼い主とはぐれたり、避難所で育てきれなくなったりしたペットを預かる活動を続けている。

 これまで保護したのは犬や猫、約80匹。電話が伝える内容を、動物のことだと理解するのに時間がかかった。ワゴン車で石巻市から急行。目に飛び込んできたのは、田んぼにたまった海水で、苦しそうに身をくねらせるイルカの一種、スナメリだった。

 「救助」を依頼したのは、仙台市内の佐藤昌幸さん(55)。近くを自転車で通っていて、バシャバシャという音を聞き、黒褐色の体に気づいた。「見つけてしまうと何とかしないとね。こいつも津波の被害者だから」。避難所にはってあったペット保護の連絡先に望みを託した。

 平さんと知人の3人は、落ちていた車のパーツと布団で「担架」を用意。近くにあった網ですくおうとするがうまく行かず、最後は平さんが長靴で田んぼに入り、スナメリを抱きかかえた。

 県内の水族館は被災して電話がつながらない。知り合いを通じて連絡した獣医師は「ぬらしたタオルで背中を覆って海に放すしかない」。がれきを縫うようにワゴン車で海を目指し、最後は砂浜に足を取られながら、海に戻した。

 少しずつ沖に行く姿を見て平さんは「生きていけるかわからないけど、田んぼで死ぬより全然いいでしょう。よかった」。専門家によると、仙台沖は、スナメリの太平洋側での生息の北限。体長や体色から、津波で群れからはぐれた子どもとみられる。(泗水康信)

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