2011年3月23日0時58分
東日本大震災で被災した東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)で22日夜、外部電源からの電力供給によって3号機の中央制御室の照明が点灯した。中央制御室には原子炉や燃料貯蔵プールの状態を示す計器類が集中しており、作業環境の向上が期待される。失われた冷却機能の回復に向けて一歩前進した。
原発の運転・監視をする中央制御室は、原子炉建屋に隣接している。
東電によれば、3号機では22日午後1時ごろに外部から電気が届いていることを確認。午後10時43分に中央制御室の照明が点灯した。これまでは懐中電灯を使って計器類を見ざるを得なかったため、作業環境の向上が期待できるという。
3号機では現在、消防ポンプ車で炉心に冷却のための海水を注入する作業が続けられている。外部からの電源が復旧し、通常時に原子炉や燃料貯蔵プールを冷却するシステムの再開が期待される。
ただ、中央制御室の計器や機器類、冷却用ポンプなどが正しく動くのかを点検する必要があり、冷却システムが復旧するまで、まだしばらく時間がかかりそうだ。
3号機に隣接する4号機でもこの日午前10時35分、外部からの電気が届いていることが確認され、中央制御室の照明復旧を急いでいる。
この日の作業の結果、1〜6号機のすべてで通電が確認された。6号機では同日午後7時40分ごろ、隣接する5号機に引き続き、非常時のディーゼル発電機から、外部電源による通常の電力供給に切り替わった。
1号機については、すでに通電が確認されている隣の2号機とケーブルで接続されているのを確認し、電力供給が可能と判断した。
建屋の損傷が少ないと見られる2号機でも、原子炉などの復旧作業が進んでいる。
原子炉や使用済み核燃料貯蔵プールに冷却水を送る「補給水系」では、水を送るポンプのモーターにショートが見つかり、機器の交換や点検が続けられている。冷却水の確保を優先するのは、2号機が建屋の損傷が少ない半面、外から貯蔵プールの状況などを確認するのが難しいという事情がある。
2号機から約1キロ離れた原発正門付近の放射線量は22日午後8時現在、1時間あたり254マイクロシーベルトで、22日未明以降、大きな変動は見せていない。
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冷却作業に初めて投入されたコンクリートポンプ車は長いアームを持ち、遠隔操作で50メートルを超える高さから集中的に放水できる。本来は高層ビルなどの建設現場でコンクリート注入に使われるものだ。ほぼ真上から放水することで、目標である使用済み核燃料の貯蔵プールが狙いやすくなると期待されている。午後5時17分から約3時間、4号機に向けて放水した。
3号機には、東京消防庁が大阪市消防局と連携し、午後3時10分から50分間、放水した。毎分3トンのペースで放水できたとすると放水量は約150トン。同庁は19日以降、3号機に対し、貯蔵プールの容量(1425トン)を大きく上回る約3800トンを放水した計算になる。
豪州からは22日、大型の放水ポンプ装置が日本に届けられた。
豪州大使館や軍関係者によると、装置はポンプや放水機など複数のユニットからなり、輸送にトラック10台を要する大きな機械だ。無人で放水できる。日米両政府から要請を受けていたという。
この日、早朝と午後の2回に分けて、豪州軍の大型輸送機「C17」で東京都福生市などにある在日米軍横田基地に運ばれた。
豪州大使館のリチャード・アンドリュース公使は、ホースやポンプとみられる機器が続々と運び出される様子を見守りながら「大変な震災。豪州でもみんな心配しています。何でもお助けしたい」と語った。