2011年3月21日18時27分
菅直人首相は21日、規制値を超える放射性物質が検出された農産物について、福島、茨城、栃木、群馬の4県に対して、県単位で出荷停止を指示した。枝野幸男官房長官が同日夕の記者会見で明らかにした。東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響と認定し、原子力災害対策特別措置法に基づいて指示を出した。
厚生労働省によると、同法による出荷制限は初めて。
指示対象になる品目は福島、茨城、栃木、群馬の各県産ホウレンソウ、かき菜と、福島県産の原乳(搾りたての牛の乳)。出荷停止期間は「当分の間」としている。露地物かハウス物かなどにかかわらず、県内全域での生産品が対象になる。都道府県単位の産地表示は義務づけられているが、消費者は栽培方法を区別できないためだ。
枝野氏は会見で「人体に影響を及ぼす数値ではないので、過剰な反応のないよう冷静に対応してほしい。出荷停止にしているので、基本的に流通しているものに健康被害を与えるものはない」と強調した。指示に法的強制力はないが、大塚耕平厚労副大臣は「この局面で指示に従わないことはありえない」と話す。
対象農家への補償については、枝野氏は「一義的には原子力災害を起こした東電が責任を持つ。東電が十分補償できない場合は国がしっかり対応する」と説明。売り上げ減少分の全額が補償対象になる見通しだ。東電の藤本孝副社長は21日の記者会見で「誠にご迷惑をおかけしている。国と相談をしながら誠実な対応をしていきたい」と述べた。
今後の調査で規制値を安定的に下回っていることが確認されれば制限を解除する方針だが、具体的な解除基準はまだ決まっていない。枝野氏は今後の調査結果によっては出荷停止を指示する品目が増える可能性も示唆した。
放射性物質を含む農産品の規制については、福島第一原発の事故を受け、厚労省が食品衛生法に基づく暫定的な規制値を急きょ設けた。同省の求めを受けた各県などの20日までの調査で、4県に加えて千葉県産シュンギクを加えた計5県の農産物について規制値を超える放射性ヨウ素やセシウムを検出していた。シュンギクについては、規制値を上回ったのが千葉県北部の1カ所。「現時点で地域的な広がりは確認できない」(厚労省担当者)と判断した。
また乳児の場合、牛乳についての放射性ヨウ素の暫定規制値は1キロあたり100ベクレルだが、厚労省は21日、水道水についても100ベクレルを超える場合は、粉ミルクに使うなどして乳児が摂取しないよう呼びかけることを、都道府県に通知した。