2011年3月21日13時8分
避難所となった岩手県大槌町の安渡小学校の校庭で、建物からあふれた約30人の避難者が車中泊の生活を続けている。狭い車内で高齢者や幼い子どものいる家族が身を寄せ合う。ガソリンを切らすわけにはいかず、厳しい寒さにもエンジンをかけっぱなしにできない状態が続いている。
同小は災害時に約120人の受け入れを想定していたが、今回の地震直後には千人を超す人が押し寄せた。20日時点でも約400人が教室や体育館に身を寄せている。
自宅が流された会社員村上和浩さん(38)夫妻は4人家族で、6歳と2歳の2人の娘がいる。11日の夜、避難所に着くと、すでに満杯の状態。校舎横のプレハブ小屋に泊まったが、横になることも出来ないほど混み合い、座って一夜を明かした。
「子供が小さいので泣き声で迷惑をかけてしまうと思って」。2日目からワゴン車の中で車中泊を続ける。車内にロープを張ってタオルを干し、運転席と助手席は物置のように使っている。
「4人で毛布をかぶって寝ていますが、それでも寒い。時々エンジンをかけて暖を取っていますが、燃料が少ないから何日続くかわからないですね」
同小の菊池和子校長は「避難できる場所は満杯。校舎の3階は空いていますが、耐震構造に問題があって入れない状態です」と話す。
高齢者がトイレなどで迷惑をかけるとして避難所に入ることをためらうケースも。小川久美子さん(42)は、86歳になる祖母と11日夜から車中泊を続ける。軽自動車で車内は狭い。祖母がなんとか足を伸ばせる程度だ。「(祖母が)夜トイレに立つ時に迷惑をかけることを気にしているので……。電気が通れば頼れる知り合いの家があり、それまでの辛抱です」
避難所担当の職員の中にも、「カーラジオで情報収集するため」と車中泊を続ける人もいた。町職員によると、同校周辺では、道路脇に路上駐車した車内で避難生活をしている人も複数いるという。
現時点では車中泊で体調を崩した人の情報はないというが、2004年の新潟県中越地震では、エコノミークラス症候群が原因の肺塞栓(そくせん)によって車中で死亡した人もいる。(杉村和将)