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【Q&A】農作物から放射能、食べても平気? 

2011年3月20日8時54分

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グラフ:被曝線量と体への影響拡大被曝線量と体への影響

 福島第一原発の事故の影響で、牛乳やホウレンソウから放射性物質が見つかった。飲んだり食べたりしても大丈夫なのか、まとめた。

 ■健康害するリスク小さい

 Q ホウレンソウや牛乳が放射能で汚染されているの?

 A 福島第一原発の事故では、ヨウ素やセシウムなどの放射性物質が周辺に広く飛び散った。それが、ホウレンソウの表面に降り注ぎ、検出された。汚染された草や水をとった牛の乳からも見つかった。

 Q どれぐらいの値なの?

 A 厚生労働省の規制値に比べると、ホウレンソウからは3〜7・5倍のヨウ素が見つかった。牛乳からも最高5倍のヨウ素が出た。規制値は、今回の事故をきっかけに、厚労省が暫定の値として設けたものだ。

 Q 汚染された食品を食べたり飲んだりしても大丈夫なの?

 A 食品の安全性基準は厳しい値に決められている。健康に影響を与えかねない値より、かなり余裕をもって設定されている。だから、「ただちに健康に影響が出るわけではない」という見方で専門家の意見は一致している。あまり心配し過ぎてもいけないようだ。

 Q 汚染された食品をとると、体はどれぐらい被曝(ひばく)してしまうの?

 A 今回、ヨウ素に汚染されていることが分かった福島県の牛乳を約1リットル飲むと、人体が受ける影響は、約33マイクロシーベルトという値になる。これは胃のX線集団検診を1回受けた時に受ける放射線量の約20分の1。

 最も高い値が出た茨城県のホウレンソウを洗わずに1キロ食べたとすると、約330マイクロシーベルトになり、胃のX線集団検診を0・5回受けた値にあたる。

 Q それは、どのぐらいのリスクなの?

 A そう大きくはない。単純に比較はできないが、妊婦がX線撮影などを受けるとき、胎児へのリスクは、少なくとも5万マイクロシーベルトまでは問題がないとされている。ただ、上限の判断は難しく、米国の学会や審議会の間でも15万マイクロシーベルト〜5万マイクロシーベルトと幅がある。

 Q 時間がたてば、放射能は弱くなるの?

 A 放射線の量が半分になるまでの期間を「半減期」という。ヨウ素の場合は8日と短い。セシウムは30年と長く、長期間、放射線を出し続ける可能性がある。その土地で育った草を家畜が食べ続けると、肉などの畜産物も汚染されてしまうかもしれない。

 Q 今後はどんな注意が必要なの?

 A 汚染地域は広そうだ。農産物が流通に乗る前に、どれぐらい汚染されているか、早く調べる必要がある。ヨウ素は半減期が短いとはいえ、大量に取ると子どもでは甲状腺にたまってしまい、がんになる危険がある。とりわけ、原発周辺地域に住む子どもには注意が必要だ。

 ■水で洗えば流せる

 Q 食べる時にできることはないの?

 A 元原子力安全委員の松原純子さんは「気になる人は流水で洗って。葉の表面についた放射性物質を落とすことができる」と話している。ホウレンソウをお浸しにするとヨウ素、セシウムを50〜80%除去できるとの実験結果もある。秋田大名誉教授の滝澤行雄さん(公衆衛生学)は「熱湯でゆでてあく抜きするのも有効」と言う。熱で放射性物質は分解しないが、洗い流す効果があるようだ。

 Q 牛乳はどう?

 A 液体はこうした方法は採れない。ただ、牛乳で規制値を超える値が検出された福島県川俣町では全酪農家が震災で出荷していなかった。仮に同程度の値の他地域の牛乳を続けて飲んでいたとしても、事故から1週間と時間が短く放射性物質の総量は限られる。いま店頭や家庭にある牛乳を捨てる必要はない。

 Q どういう経緯で分かったの?

 A 17日に厚労省が地方自治体に調査を求め、19日に結果が出た。全国消費者団体連絡会事務局長の阿南久さんは、すぐに調査を始めて結果を公表し、問題の食品を1年間食べ続けた場合の影響を示したのはわかりやすいという。ただ、調査の全容が明確でないのが気になるという。「調査内容や数値の意味をわかりやすくかみ砕き、消費者はどうすればいいのか、具体的行動に結びつく説明を添えてほしい」と注文している。

 ■Qこれからどうなるの 出荷停止を政府検討

 Q すでに出荷された農産物はどうなるの?

 A 食品衛生法では、有害物質を含む食品の販売を禁じているが、放射能についての基準はない。このため、厚労省は今回、根拠のない風評被害を防ぐため、急きょ暫定規制値をつくり、対応した。でも、規制値を超えるサンプルが出た日の出荷分しか止められない。検査日より前に出荷されたものについて、大塚耕平厚労副大臣は「自主的な対応になる」と話している。

 Q 今後の対応は?

 A 規制値を上回っても食品衛生法では、調査対象となった農産品をつくった農家の出荷だけしかとめられず、出荷停止の判断も都道府県に委ねている。このため、政府は、原子力災害対策特別措置法に基づき、福島県と茨城県のホウレンソウ、福島県の牛乳の出荷を政府判断で停止する検討を始めた。

 これまでも、茨城県で起きたJCO事故などで周辺から出荷される農水産物の風評被害が起こるなど、食品の放射能汚染は問題になった。風評被害や消費者の不安を解消するため、食品安全委員会などによる丁寧な説明も必要だ。

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