2011年3月19日10時37分
宮城県の牡鹿半島まで支援物資を運んだ水産庁の取締船に、通信手段を絶たれ、孤立していた集落の住民たちが、メッセージを記した紙を託した。「無事です」「けがなく元気にがんばっています」。メッセージは同庁ホームページ(HP)に載せられ、それを読んだ家族や親族らから連絡があったという。
取締船「白竜丸」が牡鹿半島の石巻市表浜地区に着いたのは、17日昼ごろ。粉ミルクやカップスープ、おかゆ、軽油などを下ろした職員に、地区の漁協の幹部が近づいた。「もう一つお願いがあります」
表浜地区は牡鹿半島の先端近く。電話は通じず、津波で道路が分断されて移動も困難だ。自分たちが元気でいるということを、親族や知人に伝えたいというのが、約1200人の住民らの願いだった。
住民らは、家族ごとにメッセージを記した。それを待つため、白竜丸は18日朝まで滞在した。書類の切れ端、チラシの裏――。手書きの言葉がいっぱいに記された38枚を、白竜丸の職員は受け取った。
白竜丸は落ち合った別の同庁の船にメッセージの束を託した。受け取った船は別の岸壁に着岸し、職員は1時間以上歩いて石巻市役所まで運び、亀山紘市長に手渡した。一方で白竜丸の中では、手の空いた職員が総出でメッセージを入力し、夕方までに衛星携帯で東京・霞が関の同庁に電送した。
メッセージは、同庁のHP(http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/anpi.html#chiku)に掲載された。19日朝までに、それを読んで家族や知人の無事を知った京都や青森などの住民5人から、同庁に対し「安心した」「もっと詳しい情報はないですか」などと連絡が入ったという。(大谷聡)