2011年3月18日19時33分
自衛隊員に担がれてヘリコプターに乗るお年寄り。激しい音や風に目をつぶっていた=18日午後0時52分、宮城県石巻市雄勝町、福井写す
ヘリコプターが出す爆音と風圧のなか、車いすや担架にのったお年寄りを自衛隊員が1人ずつ運び込んでいった=18日午後0時19分、宮城県石巻市雄勝町、福井写す
震災で「陸の孤島」となっていた宮城県石巻市雄勝町で18日、特別養護老人ホーム「雄心苑」に取り残されていた入所者66人が、自衛隊の大型ヘリコプターで救出された。震災から1週間。これ以上は体が持たないぎりぎりの状態だった。
雄心苑は高台にあり、津波の被害をまぬがれた。しかし電気や水道はストップ。外部との通信も遮断された。近くの人たちが持ってきてくれた冷凍の魚や、3日分あった流動食などでしのいでいたが、ほぼ底をついた。
雄勝地区は、石巻市中心部とかろうじて林道でつながった状態で、移動には約1時間を要する。長時間の移動に耐えられないお年寄りが多く、中心部も大きな被害を受けている。身動きが取れないまま衛生環境も悪くなり、16日に市を通じて脱出を要望した。
最高齢は102歳。施設の車に分乗し、約5キロ離れた中学校のグラウンドからヘリに乗った。初めて施設の外に出て、目の当たりにした惨状。デイサービスで施設を訪ねていて地震にあった中島とよこさん(84)は「家は流されてたし、びっくりして……。今までの津波は庭くらいまでだったのに。もう、町の現状を見るのもいやだ」。
ヘリに乗る前には、職員がそれぞれの軍手に励ましのメッセージを書いた。中島さんには「すくわれた命大切に」。別の女性には「笑う門には福来たる」。この女性は「心配ねぇ」とつぶやいた。
ぬかるんだグラウンドで、車いすや担架でヘリに運び込まれたお年寄りたち。同日午後、山形県の庄内空港に着き、小型バスなどで受け入れ先の18施設へ向かった。
ほとんどのお年寄りが、生まれて初めて地元を出て暮らす。(福井悠介、岡田和彦)