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枝野官房長官の会見全文〈14日午後9時3分〉

2011年3月14日23時15分

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 枝野幸男官房長官の14日午後9時3分からの記者会見の内容は次の通り。

【冒頭発言】

 私の方から原子力発電所の件、計画停電の件、それぞれ当事者の東京電力からも発表、報告がなされているが、詳細、細かい具体的なところは直接当事者の方から発表されていると思うが、私どもの政府としての認識について改めてしっかりとご報告させていただこうということでこの場をセットさせていただいた。

 まず、福島第一原子力発電所の件についてご報告申し上げる。この原子力発電所のまず、いわゆる水素爆発を起こした3号機、本日午前11時過ぎに水素爆発を起こした3号機をはじめとして、第一原子力発電所の各機については、大変ご心配をおかけをいたしております。

 3号機については、水素爆発の後も注入再開の努力を行い、8時すぎに注水が再開された。第1号機についても同様に注水を開始した。これら二つの機については本日午前11時過ぎの水素爆発によって、建物の屋根、外壁等が飛散をしていて、その取り除き作業等によって再開をするのに若干の時間がかかり、ご心配をおかけしたが、この会見場に下りてくるタイミングでは注水が再開し、水位の上昇も見られている。これによってしっかりと冷却をするという行為が再開しているので、この状態が続けば安定的な状況に向かっていくものと思っている。

 2号機については、原子炉を冷却する装置が停止をし、こちらも水で冷却をするための作業に入っていた。この作業については一時ポンプの燃料の不足等があり、想定より時間がかかってしまい、一時水位が低下して、いわゆる燃料棒のところが水面から出る状態が若干継続したものとみられている。しかし、やはり20時過ぎにそうした問題を解決して、注水を開始することができ、水位の上昇も観測されている。

 いずれも水を注ぎ込むことによって原子炉を冷却をするという作業が再開できているので、このまま水を流し込む作業でしっかりと冷却を進めることができれば、安定的な状況に向かっていくものと思われるが、引き続きこうした状態を継続し、安定した状況に向かわせるべく現地の作業の皆さんは全力を挙げていただいているが、安全確保に向けて最大限の努力を進めてまいる。

 続いて、計画停電の件について。本日は計画停電の初日だった。いろいろと混乱もあり、国民の皆さんには大変ご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げる。と同時に、国民の皆さんの節電への積極的な取り組みに感謝を申し上げる次第だ。特に電力需要が増える通勤、通学の時間帯に事前の予測よりも900万キロワットも低い電力需要であった。これは電車の運行が止まったということの効果もあるが、地震の影響を考慮しない想定需要と比べると1500万キロワットも低い数値。夕方から夜にかけても、すべての実績値が出ているわけではないが、トレンドで見ると、やはり事前の想定より大きく減少していることが考えられる。

 こうしたことは鉄道事業者はもとより、国民一人ひとりの節電努力や効率的な電力使用にご協力をいただいた産業界などの貢献なくしては、なしえなかった結果だと思っている。

 明日については、現在、鉄道について何とか運行するなかで対応ができないだろうかということについて、東京電力と経産省、国交省、鉄道事業者等と調整を進めているところ。特に本日、鉄道の運休にかかわった多くの国民の皆さんに大変なご迷惑をおかけした。また、社会経済活動のうえで鉄道運送がしっかりと行われることは大変重要であると考えている。

 ただ単に鉄道をこのままの状態で運行した場合には、節電の努力を最大限していただいている状況においても、計画停電がなければ電力需要が供給を上回ることが想定される。一方で、計画停電を行うということをこのまま進めようとすれば、本日のような鉄道の運休等を鉄道事業者としては、せざるを得ないという前提条件になっている。こうしたなかで、鉄道を運行しながら、なおかつ、電力需要が供給を上回って予測されない停電という事態を生じさせないためには、様々ないま工夫と調整の努力をしていただいている。

 最終的な結論はまだ出ていないが、ぎりぎりまでの努力をしていただけるというご報告をいただいている。いずれにしても、鉄道利用の可能性を少しでも高めるためには、国民の皆さん一人ひとりの節電による努力というものの、本日以上の積み重ねが必要になることが想定される。明日以降は冷え込みが予想され、電力需要の押し上げ要因となることも考えられる。従って、国民の皆さんには大変ご不便をおかけをし、ご迷惑をおかけをしているが、できるだけ早い時期に最低限の鉄道運行を確保しながら、計画停電でしっかりと電力供給の最低限の安全を図る、安定を図るということの努力を進めてまいりますので、その大前提となる節電のご協力を重ねてお願いを申し上げる。

【以下質疑】

【福島第一原発】

 ――福島第一原発2号機。今回の燃料棒の露出によって、1号機や3号機のように爆発する可能性は。

 1号機や3号機が、ある時点でたどった状態と類似した状況になっていると認識している。ただ、若干条件が違うのは、この2号機については、3号機の爆発によって、建屋の部分に、空気が通る状態ができているという報告を受けている。それも高い位置にできている。従って、水素が仮に発生したとしても、水素は一番軽いから、ここを通じて外に出てしまうので、少なくとも大規模な爆発が起こる可能性は相当低いという報告を受けている。

 ――2号機で炉心の溶融が起きて、圧力容器が破損する、あるいはこれからする可能性は。

 1号も3号も、ベントを通して、あるいは、それ以外のルートを通って、外部にこれは身体に影響を与えない程度の放射性物資が出ているということは、従来から伝えている通りなので、それについては、十分可能性があると、若干、そうしたところから出ている可能性は、あるという風には思っている。そして、同様の可能性については、従来、1号機、3号機がたどってきたプロセスと類似のプロセスをたどっているので、その可能性はあると思う。これについては、周辺の放射線量の測定を、しっかりと行うことによって、異常な放射線の放出がないかどうかを、しっかりとモニタリングして参りたいと思っている。

 【計画停電】

 ――計画停電。鉄道運行について、ぎりぎりまで努力するということだが、いつまでに結論を出すのか。

 私の所には、とにかく出来るだけ、もちろん、明日からすべて平常通りということにはならないと思うが、出来るだけ鉄道の運行を確保するためには、専門的な、色々と技術的なことがあるようだが、専門家同士の間でぎりぎりの調整している。これについては、もちろん、電車の始発の時間等もあるが、そうしたことを踏まえながら、最大限ぎりぎりのところという報告を受けている。具体的な時間までは、報告を受けていない。

 ――相当早めにやらないと運行会社も困るのでは。

 基本的には運行会社に、こちらから、国なり東電から命じたりお願いしたり、というよりも、大きな意味ではお願いをしているが、調整をしながらなので、各鉄道事業者においても、利用客との関係で、ぎりぎりのところの努力を判断してもらえると思っている。

 ――時間帯は決まってないと。混乱したのは早朝。明日の早朝、夕方は通常運行するということか。

 通常運行を模索しているということは、聞いていない。鉄道の運行を出来るだけ確保するための努力をしているという報告。それは、運行の量が多ければ多いほど、電力をたくさん供出することになるし、鉄道運行する場合も、計画停電がなされることが前提になってくる。計画停電によって、鉄道事業者に供給される電力が下がるということも前提になる。それと、安全性の兼ね合いなどの調整をしているということ。

 【放射線検査】

 ――シンガポール政府が、日本の生鮮品に放射線検査を行う意向を示しているとの報道。政府として把握しているか。

 各国においても、色々と心配をされているかと思う。もちろん国民が誰よりも心配されているかと思う。しかし、これについては繰り返し申し上げているが、原子力発電所周辺の放射線量については、しっかりとモニタリングを続けてきており、身体に影響を及ぼす可能性のない、放射線を帯びた物質が出ていることは間違いない。その量もしっかりと、一定の範囲の中で動いているので、必要以上の心配をされることなく、冷静に対応いただきたいと思う。もし、必要があれば、そのことについては、適切に正確に報告するが、現時点では、出ている放射線物質の量はしっかりモニタリングして、報告している。

 ――女川原発で数値を観測している。広く拡散している現状についてはどう認識しているか。

 これは気象状況、風向き等によっては、遠くまで飛ぶことは、当然可能性があることとして、国際的にも安全性の基準等が設けられていると聞いているので、したがって周辺部で従来報告している数値の幅の変化であれば、そうしたことはもちろん、目に見えないものだから心配するのは当然だと思うが、例えばエックス線写真等でも、放射線、私どもも皆さんも浴びる。高いところ、空を飛べば浴びる。そうしたものとの比較の上において、心配に及ばない量である。もしそうしたものに変化があるときには、必ずしっかり国民に説明する。

 【福島第一原発その2】

 ――冷却水を送るポンプは爆発によって、5台のうち1台しか使えない状況なのか。

 一時的に、三つとも注水が出来ない状態があったので、それを回復させるのに、若干の時間がかかった。そのことによって、大変ご心配をおかけした。

 【首相の災害対応】

 ――夕方の会見で、首相が避難所を直接訪問したいと検討していたと。誰が誰に持ちかけ、どういう理由で遠慮してほしいとなったのか。

 遠慮してほしいというよりも、事務方を通じて、現地が受け入れられる状況かどうか、改めて情報を把握したところ、かえって思いは別として迷惑をかけるということを、私のところで判断して、まだ時期尚早でありますということを、総理に進言して、できるだけ早い時期に、しかし、現場にかける迷惑が、様々な救援活動に影響を及ぼさない、出来るだけ早い時期に改めて検討することになった。

 ――今日首相はぶら下がりなど、記者団から取材を受けていないが、理由は。

 ここまでの時点で、総理が直接国民のみなさんにお伝えをする必要のある事項が生じていないということだという風に私は理解をしている。できるだけ、総理は最高責任者として、あらゆる案件の必要のある、重要な最高決定に関与してきているので、できるだけ、それに代わって、私の方から正確に情報を伝える、あるいは関係各省からそれぞれ具体的な情報を伝えるということで、特にこの地震の災害に対する情報、政府としての情報提供をしっかりと行うと同時に、それ以上に大事なことは、この危機対応を異常なく行うということなので、これまでのところ、危機対応に専念する中で、皆さんの前に出てくる機会がなかったということだ。

 できるだけ、総理から直接国民の皆さんにお話をするのはこういう局面においては特に重要だという風に私も思っているし、総理もそういう問題意識を持っているので、今日この後どうなるかは別にして、そうした問題意識をしっかり持ちながら、今後の対応を進めていきたい。

 ――今日「72時間」という生存可能性をめぐるメルクマール。総理会見があってもよかったのでは。

 一般的にこうした災害などによる救命の可能性が大きく下がる「72時間」を残念ながら超えてしまった中で、安否の分からない方がたくさんいらっしゃる。また、全てのがれき等を捜索出来ている状況ではないということは、大変残念に思っている。しかしながら、同時に、この救命の努力が現時点でも鋭意続けているし、一方、この地震の直接には命を失うことはなかった、けれども大変厳しい条件の下で避難生活をされている方、あるいは避難所にもまだ行けずに「孤立」状態にある方、多々おられる。こうした皆さんの生活を出来るだけバックアップするということにも今、全力で取り組んでいる。この二つの一刻を争う対応と、そして、ちょっと違った意味で一刻を争い、常に最高の緊張感を持って臨まないといけない原発の対応に、まさに自ら(首相は)先頭に立って、今取り組んでいるということで、国民の皆さんに、その時間の経過の直接のメッセージがないことはご容赦いただけるものと思っている。

 【福島第一原発その3】

 ――原発の現場の作業員の健康被害が出ているが、政府として何らかの補償は。

 当然、現場の作業員のみなさんには大変な危険の中で、大変なご苦労を頂いているということに本当に頭の下がる思いだ。基本的には、安全基準の範囲内で作業をしていただいている。ただ、今日も負傷された方等は、ある一瞬に、一時的に放射線が出ている、放射能を帯びた物質が出ている可能性もあるので、そうした方に対するチェックや健康管理は万全を期して参りたい。当然のことながら、こうしたことによって負傷された方についてはしっかりと、広い意味での政府の責任として対応していくことが役割になると思っている。

――2号機についてだが、燃料棒の溶融は起きたと考えているか。

 それが起きている可能性は高い。1、2、3、いずれも。確認はできないが、起きている可能性は高いという条件は三つとも同じだ。

 ――2号機の(作業でポンプ車の)燃料不足の原因について東電から報告は。

 もとの原因のところまではまだ報告を受けていない。逆に現時点では、燃料も水も当分の間のものについては、しっかりとバックアップ含めて確保しているという報告を受けている。

 ――玄葉国家戦略担当相が今回の事故について、「『チェルノブイリのようにはならない』と東電から報告を受けている」と話をしているが、そんな報告は受けているか。

 この国の原発の構造やそれからここまでの管理の状態はというものは、あれ(チェルノブイリ)は、一瞬に、確か大きな事故になったというものであったと記憶しているが、しっかりと地震そのものは一瞬で生じたものだが、その後の対応においては、一定の管理の下で、残念ながら国民の皆さんにはご心配をおかけをする状態で推移しているが、今なお、安定化に向けた方向性で現時点では進んでいるし、最悪の事態を想定してもチェルノブイリと同様の事態にはならないという風には、何をもって同様と見るか定義に意味があるかと思う。

 ――政府が想定している「最悪の事態」はチェルノブイリ級のものではないということか。

 チェルノブイリ級のものという言葉は、それは何のどういう性格のものを指すのかということで全く意味が違う。そうした意味では、全く同種の事故はあり得ないわけで。今回は、最初の地震、津波という事象からしっかりと一定のコントロールの下、管理の下でここまで推移してきているという意味では対応が違う。

 【計画停電その2】

 ――計画停電。本日は限られた時間と地域のみだったが、今後も鉄道の本数削減と節電で、限られた停電でいいと思っているのかそうでないか。

 これはまさに国民の皆さんの節電のご協力がどの程度の量で、どの程度の期間継続していただけるのかにかかわってくる問題。今日の場合は、この計画停電がある、という前提で鉄道事業者のみなさんが運行上の問題節電のご協力という観点から運行を相当抑えられた。その結果、国民にご不便をおかけした。これを鉄道をより運行しようとすればするほど、計画停電を実際に電力供給をストップするところまでやらなければならない可能性は高くなるという相関関係はある。そうした中では、今日のみなさんへおかけしたご迷惑、国民のみなさんのニーズ等を考えるときに、できうるならば、鉄道運行を一定程度はしっかりと確保しながら、しかし、計画停電は履行させていただく方が、国民の皆さんにおかけする迷惑は少ないのではないかということで、それのぎりぎりの努力をしている。

 ――政府の誘導したい方向性は。運行本数を増やす方向にもっていきたいと。

 鉄道運行も一種のプロフェッショナルの専門的な世界で、いま専門家の皆さんで色々と、どういうところに停電の効果が及ぶのか、ということによってそれぞれ色々と状況が、安全やその他の面で、とらなきゃならない対応が違う。そういうことをすべて専門的に分析しながら、可能な道を模索している。

 ――今の時点で政令を決定することは検討してるのか。

 基本的には、電力の供給を、スイッチひとつ的に切り替えていく、送電するしないというのを切り替えていくのは変電所単位でないとできない。それより先の所でここには送る、ここには送らないという選別をするためには相当、現場に近いところで、個別具体的な工事が必要になるという前提の中にあるので、こうした計画停電という方法をとらざるをえない。

 【首相の災害対応その2】

 ――首相のぶら下がり。直接総理が伝えるメッセージはないというが、記者の質問に、こういうときだからこそ答える意味があるのでは。

 その必要性については私も否定しない。ただご理解いただきたいのは、それ以上に、私が直接大きく関与している原発と計画停電の件だけでも相当のエネルギーや時間や、瞬間的に早い時間、正確な情報を把握することが求められている。総理は最終的には、私や副長官、海江田(経済産業)大臣、松本(防災担当)大臣、それぞれが扱っている案件について、全体の最高責任者なので、しかもそれぞれが一刻一秒を争って、しかもそれが国民の生命や最低限の生活の確保のために不可欠の仕事をさせていただいているということなので、そちらのほうを優先させていただいていることについてはご理解いただきたい。可能な範囲内では、いまのご指摘は私はごもっともと思うので、可能な範囲では対応する努力をしていきたい。

 【被災地支援】

 ――孤立した地域で食料や水が届いてないところがあるがあと何日かかる。

 いま最善の努力をして自衛隊等の空輸のプロセス等もお願いして対応しているところ。いま申し上げられるのはとにかくできるだけ早く、最大限の努力をしてできるだけ早くということをさせていただいている。

 【福島第一原発その4】

 ――冒頭、原発で注水を確認しているといったが、東電が会見で、1と3号機で注水が確認できなくなったと。

 それは何時何分の時点の情報か。私がこの会見場に入ったときには、今申し上げたような報告を受けた。もちろん、あの段階でも冒頭申し上げたが、これがしっかりと安定的になることにむけて努力をしているという趣旨のことを申し上げたかと思うが、もしその後の情報であるなら、できれば戻らせていただきたいと思う。

 ――長官が会見した後の情報かもしれない。

 (官邸スタッフ:会見の始まりはまさに9時ちょっとなので)

 よろしいか。

――確認したら長官のほうから知らせてもらえるか

 情勢状況によってご報告させていただく。必要があれば。私からになるのか、保安院からになるのか、東電からになるのかは、状況によってしかるべきところから報告させていただく。

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