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福島第一原発1号機、蒸気放出 大気中に放射性物質

2011年3月12日14時30分

写真拡大福島第一原子力発電所=12日午前9時52分、朝日新聞社ヘリから、山本裕之撮影

 東京電力は12日朝、東日本大震災で被害を受けた福島第一原子力発電所1号機(福島県大熊町)で、放射性物質を含む空気を大気中に放出するため、弁を開ける作業をした。原子炉格納容器が破損して大量の放射性物質が外部にもれるのを防ぐための措置で、意図的に放射性物質を外部に出すのは国内初。福島第二原発(同県楢葉町、富岡町)でも、原子炉の容器内の圧力を制御できないため、1〜4号機のすべてで放出の準備作業に入った。政府は第二原発に対しても緊急事態を宣言した。

【PDF号外】福島原発 放射能を放出

 経済産業省原子力安全・保安院は同日午後、1号機の炉心で燃料が溶融している可能性が高いと発表した。東電は、燃料の一部が水面から露出しており、建屋内の放射線レベルが高くなっていることから、「燃料の一部が溶けるなど何らかの損傷を受けている可能性が高い」としていた。東電は、水位の低下を防ぐため、消防車でこれまでに2万1千リットルの冷却水を注入しているという。

 保安院や東電によると、福島第一原発1号機で、原子炉建屋内にある中央制御室の放射線量が通常の約1千倍に達している。正門付近では、通常の約20倍となっているという。中央制御室の通常の放射線量は1時間あたり0.16マイクロシーベルトだが、12日早朝の時点で150マイクロシーベルトに達していた。

 通常、原発では建屋内にある原子炉格納容器から建屋に放射能が漏れ出ないように、建屋内より格納容器側の気圧を下げている。保安院は、この機能が失われているか、放射性物質が漏れ出ている可能性もあるとみている。

 政府は福島第一原発から半径3キロ以内としていた避難指示を半径10キロに拡大。3キロ圏の双葉、大熊両町に滞在中の約7千人を含め、10キロ圏の4町に滞在する5万1207人が避難対象になった。

 政府はさらに12日朝、福島第二原発に対しても原子力災害緊急事態を宣言し、半径3キロ以内の住民には避難を、10キロ以内の住民には屋内待避をそれぞれ指示した。

 東電によると、福島第一原発での放出作業は、原子炉格納容器の圧力が上がりすぎたためだ。同日午前4時すぎの会見で、想定している設計圧力400キロパスカルに対し、計測数値は2.1倍の840キロパスカルに上がっていた。

 1号機では、非常用電源の故障のため、緊急炉心冷却システム(ECCS)が働かなくなり、核燃料の過熱を防ぐ手段がなくなっていた。熱によって圧力が高まった圧力容器内の蒸気が、安全弁によって逃がされたため、その一つ外側にある原子炉格納容器内の圧力が高まったことが考えられるという。

 放出に伴う被曝(ひばく)量について、東電は「発電所構内のうち線量が最も大きい場所で、放出開始から終了までの間に64ミリシーベルト」と試算している。放射線業務に従事する人に関して国が定める年間被曝量の上限は50ミリシーベルトで、やや上回る値だ。

 東電はかなり多めに見積もった数値としている。核燃料のウランは焼き固められており、金属でできた「被覆管」で表面を守られているからだ。東電が明らかにした被曝量の試算は、被覆管が壊れてウランの2%が溶け出した結果として、想定される数値だという。

 一方、福島第一原発の敷地境界にある環境中の放射線を測る装置(モニタリングポスト)は8カ所とも機能していないという。このため東電は、手持ちの測定装置で対応している。1〜4号機の排気筒の測定装置についても停止しているという。

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